今まさに高原(たかはら)にある山々は燃える時期を迎え
これから徐々にこの山里へも降りて参ります。
それをもって錦秋の極みとするとしても
朝晩は、ともするとその後に訪れる冬を思わせる横顔をちらつかせます。
当館の朝食の準備のために早朝の5時頃から出勤するスタッフさんたちの
朝一番の作業の一つに“埋み火起こし”“火熾し”が加わりました。
出社してフロント横の樹齢四百年の栃の木の切り株囲炉裏に
紅々とした炭を認めると何だか安心を覚えます。
これから段々と実利的にも恋しくなっていくのでしょう。
パチパチとはじける音。
焙る手の火照り。
練り香から室内へと抜ける薫り。
灰の白、炭の黒とのコントラストが効いた赤。
そして五徳に掛けた釜の湯で温める熱燗や網で焼くお八つの味。
凍てつく寒さを差し引いても
飛騨路の冬は十分お釣りのくる喜びがあります。