当館の館内各処には
折々に焚く香を置くための飾り火鉢がいくつか配置させていただいております。
そして、昨今の健康増進法や嫌煙環境の中
当館でもパブリックは空気清浄機の置いてあるフロント脇の囲炉裏の間のみに
喫煙は限定させていただいております。
但し、客室や料亭個室は室数が少なく
うまくハンドリングが出来ないこともあって
『禁煙室』という設定はしておりません。
そのため、勢い愛煙家の皆さまは
それぞれのプライベートスペース(客室または料亭個室)にて
のんでいただくことになるはずですが
その(構成されるメンバー内の)勢力図などで
パブリックに脱出されてお楽しみになる方も少なからずあります。
その際よく勘違いされますのがこの『飾り火鉢』。
「よくぞ灰皿がここに!」とばかりにご利用されることがあり
廊下を通行される“非”喫煙者の方にとっては迷惑至極なことと感じております。
以前は凝り性の主人が灰型をキチンと押さえて
灰皿として使用出来ないような“オーラ”を出していたようですが
熱しやすく冷めやすいその煽りを受けて段々と“風化”。
前述の環境と相俟って、最近は『スタンド灰皿』に成り下がっておりました。
灰型は風炉の形式に倣い『丸灰』『二文字』などとしておりましたが
これがナカナカ時間を要します。
以前ある先生が
「私は茶事に呼ばれた際に一番注視、感心するポイントは“灰型”」
と仰られたことがありました。
(勝手に)解釈すると
1)点前が上手いか下手かはある程度経験値、年数の問題。
2)道具立てにおいても取り合わせの妙味はあるものの経済的な制約が出てきます。
3)料理に関しても然り。最近の茶事は哀しいかな(料理屋としては嬉しいかな)
ご自前で、ということはかなり少なくなりました。
そうなると、席主の俗世のバックボーンに左右されない
その方のその茶席にかける熱意をどこで推し量らせていただくかというと
この灰型になる、ということなのではないでしょうか。
「灰を養う」苦労はここでは論外としても
“左官のようにコテコテに撫で付けてもいけないし、大雑把でもいけない”型押しは
念を入れれば半日は悠に掛かってしまいます。
館内に10箇所以上もあるその飾り火鉢に丹精を込めていては
物理的時間的に難しいのが現実ですが
それでも、ある程度の“様”になるよう整えなくては
“イタチゴッコ”になってしまいます。
マナー不在を嘆く前に、まず自分で出来ることを
倦まずに続けていくべきだと思い起こして
今日は頑張ってみました。